支払命令(督促手続き)の概要
支払命令(督促手続き)
- 民事訴訟において、債権者(ここでは消費者)に金銭または同一の種類のものに代替できる代替物または小切手のような有価証券を支払わせるという請求について、弁論や判決なく直ちに支払命令を下す簡易訴訟手続きを、督促手続きといいます(「民事訴訟法」第462条)。
・ 実際、2011年にはA社のスマートフォンのユーザーであるK氏が「A社のスマートフォンがユーザの位置情報を保存し、位置追跡による被害を被った」として、A社を相手に出した支払命令申請事件で裁判所はA社に支払命令を出し、それに対し、A社は命令を受けた日より2週間、与えられた異議申し立て期間中、異議申し立てを一切行わなかったので、A社はK氏に損害賠償金を支払いました。
- 支払命令(督促手続き)は、紛争当事者を召喚せず、疎明手続きも別になく、当事者が申請した書類だけで審理を行うという点で、一般的訴訟手続きに比べて費用が少なく、請求金額が定められていないので比較的多額の場合でも請求できます(「民事訴訟法」第467条)。
・ 支払命令申請の際、裁判所に納付する手数料は基本的に訴訟提起の際に添付する印紙額の約1/10であり、予納する送達の料金も、当事者1人当たり4回分で、訴訟手続きのうち、金額が最も少ない少額事件(当事者1人当たり10回分)よりも少なくなります。
支払命令手続き
支払命令の申請
- 支払命令を申請するためには、支払命令申請書を作成し、紛争相手の住所地・事務所・営業所・義務履行地・不法行為地を管轄する裁判所に提出します(「民事訴訟法」第463条)。
支払命令の発令
- 裁判所は紛争当事者(消費者と事業者)が出席せず支払命令書を審査し、請求が適切だと判断すると、支払命令を出し、当事者に支払命令正本を送達します(「民事訴訟法」第467条、第468条及び第469条)。
- もし、債務者である相手が支払命令申請書に記載されている住所に実際は住んでいない等の理由により支払命令正本が送達されない場合、裁判所は申請者に住所を訂正するよう要請します。その後、補正された住所に再送達しなければなりません。住所の補正が難しく、または外国に送達しなければならない場合、裁判所が当該事件を訴訟に付することができます(「民事訴訟法」第466条)。
支払命令の確定
- 債務者の相手は、この支払命令について送達日を基準に2週間以内に異議申し立てを行うことができます(「民事訴訟法」第468条及び第469条)。
- 相手が①異議申し立てをせず、または②異議申し立てが却下され、あるいは③異議申し立てが取り下げられた場合、支払命令は確定し、確定判決と同等の効力が生じるので、命令の内容が履行されない場合、申請者は裁判所に強制執行を申請し、支払いを受けることができます(「民事訴訟法」第474条)。
- 一方、相手が支払命令について異議申し立てを行うと、支払命令は効力を失い、事件は通常の民事訴訟手続きへと進み、新しく訴訟手続きになります(「民事訴訟法」第472条)。