分野別紛争調整委員会
紛争調整委員会
- 訴訟による紛争の解決はかなりの時間と費用が掛りますので、民事訴訟の他に和解・調整・仲裁等、裁判外紛争解決手続が多く利用されています。
- 裁判外紛争解決手続の一つである紛争調整制度は、当事者の事情を配慮し、互いに譲歩による解決方法を提示することで訴訟よりも柔軟に紛争が処理されることがあります。また、分野別専門家が直接参加することで専門性を確保することができ、費用がほぼ発生しないという長所があるので、消費者が容易に行うことができる制度です。各紛争調整委員会において成立した調整は、裁判上の和解と同一の効力が発生します。
- 韓国は金融、医療、電子取引、環境、著作権、個人情報等、様々な分野の紛争を調整するための委員会が個別法により設置されています。
※ 韓国消費者院の消費者紛争調整委員会において取り扱われる事件は必ず、韓国消費者院または消費者団体の合意勧告が先に行わなければなりません。以下の個別法による分野別紛争調整委員会は、法律により定められた手続きにより、各紛争調整委員会に調整を申し込むことができます。
金融紛争調整委員会
区分
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内容
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申込者
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「金融委員会の設置等に関する法律」第38条の各金融関連機関、預金者等の金融消費者及びその他の利害関係者(「金融委員会の設置等に関する法律」第53条第1項)。
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申込方法
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紛争調整申込書に以下の書類を添付し、申込む(「金融委員会の設置等に関する法律施行令」第13条第1項)。 1. 紛争調整申請の原因及び事実を証明する書類 2. 代理人が申込む場合、その委任状 3. その他紛争調整に必要な証拠書類または資料
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調整期間
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紛争調整申請を受けた日より60日以内(「金融委員会の設置等に関する法律」第53条第4項)
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調整決定
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紛争当事者が金融紛争調整委員会の作成した調整案を受諾する場合、調整が成立(「金融委員会の設置等に関する法律」第53条第5項及び第55条) ただし、調整案を受けた日より20日以内に調整受諾の意思を知らせなければなりません。未告知の場合、調整案を受諾しないものとみなす(「金融委員会の設置等に関する法律施行例」第21条第1項及び第2項)
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調整事例
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<事案> 治療の過程で、予想しなかった大腿骨頭無血性壊死症に対する傷害保険金支払拒否に対する調整
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<決定> 保険事故の成立条件である事故と傷害との因果関係を認めることは難しいと判断されるので、反証のない限り、被申請人は約款の定める保険金を支払う責任はない。 <出所:e-金融苦情センター紛争調整事例>
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医療紛争調整委員会
区分
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内容
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申込人
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医療紛争の当事者またはその代理人(「医療事故被害救済及び医療紛争調整等に関する法律」第27条第1項及び第2項)
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申込方法
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医療紛争の当事者またはその代理人の調整仲裁院に紛争の調整を申し込む(「医療事故被害救済及び医療紛争調整等に関する法律」第27条第1項)。
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調整期間
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調整の手続きが開始した日より90日以内(「医療事故被害救済及び医療紛争調整等に関する法律」第33条第1項) ※ 医療事故鑑定部は調整手続きが開始した日より60日以内に医療事故の鑑定結果を鑑定書として作成し、医療紛争調整部に送付しなければなりません(「医療事故被害救済及び医療紛争調整等に関する法律」第29条第1項)。
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調整決定
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当事者双方が調整部の調整決定に同意し、または同意したものとみなす場合、調整が成立(「医療事故被害救済及び医療紛争調整等に関する法律」第36条第3項)。
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調整事例
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<事案> 70代の高齢女性が、昨年の5月、手根管症候群の手術を受け、敗血症による多臓器不全で死亡。これについて、手術を行った医療従事者が手術過程で過失はなかったとして調整を申し込む
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<決定> 医療仲裁院は、その患者が高齢のうえ糖尿、高血圧、脳動脈瘤手術の病歴のある高危険群の患者で、手術前の検査結果を見ると、潜伏の感染の危険性があったにもかかわらず、医療チームの措置が適切でなく、二日後にすぐ2次手術を行ったことも、高齢の患者に大きな負担となって適切でなかったと判断した。ただし、故人の年齢と病歴が病態に重大な影響を及ぼし、治療中、挿管を自ら取り除いて状態を悪化させた点などを総合的に考慮に入れ、医療従事者が患者に5,000万ウォンの損害賠償金を支払うことで調整した。 <出所:韓国医療紛争調整仲裁院報道資料>
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電子文書・電子取引紛争調整委員会
区分
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内容
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申込人
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電子文書及び電子取引と関連し、被害を受けた消費者(「電子文書及び電子取引基本法」第33条第1項) ※ただし、別の法律により紛争調整が完了した場合は除く。
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申込方法
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電話、E-mail、電子文書・電子取引紛争調整委員会ホームページ(www.ecmc.or.kr)を通じて申し込む。
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調整期間
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紛争調整の申請を受けた日より45日以内(「電子文書及び電子取引基本法」第33条第4項本文)
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調整決定
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当事者が①電子文書・電子取引紛争調整委員会が作成した調整案に同意し、または②当事者が委員会に調整合意書を提出した場合、調整が成立(「電子文書及び電子取引基本法」第35条第1項)。
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調整事例
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<事案> オンラインサイトで鞄を注文して受領したが、物品を確認する過程で申立人は製品の状態が期待に添わなかったため、被申立人に返品・払い戻しの処理を要請した。製品の返品のために被申立人が指定した宅配会社に連絡を取ったが、連休のため宅配会社は休業日であることを確認し、被申立人に問い合わせてみたところ、郵便局は営業中であるため、発送が可能と案内されたので、当日、当該物品を(着払いで)返送した。その後、被申立人は申立人に往復配送料を振り込むよう要請し、申立人は6,000ウォン(最初の配送料:3,500ウォン、返品の案内手続きにより通知された宅配料:2,500ウォン)を被申立人に振り込み、クレジットカードの決済の取消を要請したが、被申立人は往復配送料が9,500ウォン(最初の配送料:3,500ウォン、郵便局の宅配便による返送料:6,000ウォン)であるため、3,500ウォンの追加振込を要請したことで、紛争が発生
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<決定> 購入者が受領した物品を純粋な心変わりなどで返品する場合、その配送料は購入者が負担する。ただし、当該件の場合、連休中、被申立人の提携宅配会社はもちろん他の宅配会社も営業をしない中、申立人が被申立人に返送可能な方法を問い合わせ、申立人は被申立人の案内にしたがって郵便局による返送を選んだので、当事者の調整意思を考慮に入れた際、申立人が支払うべき1,500ウォンを負担する条件で、被申立人が当該物品の販売に関連し、申立人の名義のクレジットカードによりなされた代金決済の請求を取り消すことが望ましいと思われる。 <出所:電子文書·電子取引紛争調整委員会紛争調整物語>
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環境紛争調整委員会
区分
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内容
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申込人
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環境に関連する紛争の調整を望む人(「環境紛争調整法」第16条第1項)または環境団体(「環境紛争調整法」第26条第1項)
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申込方法
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申請の趣旨と原因、紛争の経過、紛争に関連のある汚染の発生または環境被害発生の日付、場所等を記載した調整申込書を提出して申込む(「環境紛争調整法」第16条第1項及び「環境紛争調整法施行令」第8条)。
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調整期間
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紛争調整の申請を受けた日より9か月以内(「環境紛争調整法施行令」第12条)
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調整決定
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紛争当事者が環境紛争調整委員会の作成した調整案を受諾する場合、調整が成立(「環境紛争調整法」第33条第1項)
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調整事例
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<事案> 建物のリフォーム工事を行う過程で鉄材を取り払い、セメントの建物を撤去するなどの騒音と夜間作業の騒音による被害
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<決定> 「環境政策基本法」により環境汚染による被害の救済に要する費用を負担する被害補償の責任があるので、 ウォンを賠償する。 <出所:中央環境紛争調整委員会による紛争調整の事例>
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著作権紛争調整申請システム
韓国著作権委員会(https://www.copyright.or.kr)
区分
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内容
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申請人
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著作権関連の紛争の調整を希望する紛争当事者(「著作権法」第114条の2)
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申請方法
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紛争調整申請の趣旨と原因を明らかにした調整申請書を提出(「著作権法」第114条の2第1項)。
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調整期間
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紛争調整申請を受けた日より3か月以内(「著作権法施行令」第61条第5項本文)
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調整決定
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紛争当事者が韓国著作権委員会の作成した調整案を受諾する場合、調整が成立(「著作権法」第117条第1項)。 当事者が紛争調整のための出席の要求に応じず、または調整期間が経過、または当事者との間で合意が成立しない場合は、調整不成立(「著作権法施行令」第63条第1項)。
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調整事例
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<事案> 「 」ゲーム関連の書籍を発行する過程で「 」ゲームの著作権者である申請人の許可なく無断で「 」ゲーム用ソフトウェアの画面のイラストや図面、図表など様々なゲームの画面をコピー・配布
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<決定> 被申請人は、本件に関連する図書をこれ以上印刷・製本・発行・配布等の行為を行ってはならない。被申請人が現在まで制作・保有する本件関連図書及びすでに発行・配布した同図書をすべて回収し、申請人に譲渡する。 <出所:著作権紛争調整申請システムの調整の事例>
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個人情報紛争調整委員会
個人情報紛争調整委員会(https://www.kopico.go.kr)
区分
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内容
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申請人
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個人情報に関連する紛争の調整を希望する者(「個人情報保護法」第43条第1項)
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申請方法
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郵便、FAX、訪問または個人情報紛争調整委員会ホームページ(www.kopico.or.kr)で申請
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調整期間
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紛争調整の申請を受けた日より60日以内(「個人情報保護法」第44条) ※必要に応じて延長可能
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調整決定
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紛争の当事者が個人情報紛争調整委員会の作成した調整案を受諾する場合、調整が成立(「個人情報保護法」第47条) 調整案を受けた日より15日以内に調整の受諾の意思を知らせなければならない。また、告知しない場合は、調整を拒否したものとみなす(「個人情報保護法」第47条第3項)
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調整事例
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<事案> 本人の同意なく個人情報を収集し、それを第三者に漏洩した医療機関に対する制度改善要求
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<決定> 医療機関が申請人の個人情報を同意なく収集したが、それは法令等の規定に従ったものであるため個人情報保護法に違反してはいないが、個人情報が記された書類の安全措置が整っておらず、個人情報の漏洩に至ったため、それに対する制度の改善が必要。 <出所:個人情報紛争調整委員会による紛争調整の事例>
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