消費者紛争解決基準による解決
消費者紛争解決基準
- 消費者紛争解決基準とは、消費者と事業者との間に発生する紛争を円滑に解決するための合意、または勧告の基準のことをいいます。当事者との間で、紛争の解決方法に関する別途の意思表示のない場合に限り、適用します(「消費者紛争解決基準」第1条)。
- 現在、消費者と事業者との間に発生する紛争を円滑に解決するため、「消費者基本法」により「
消費者紛争解決基準」が設けられています。この基準によると、紛争解決の一般的原則を定めた「一般的消費者紛争解決基準」と、品目別に消費者被害の補償基準を定めた「品目別消費者紛争解決基準」があります(「消費者基本法」第16条第2項及び「消費者基本法施行令」第8条)。
消費者紛争解決基準の適用
- 他の法令による紛争解決基準がより有利に働く場合
・ 他の法令に基づく紛争解決基準が消費者にとってより有利に働く場合、その紛争の解決基準を優先して適用します(「消費者基本法施行令」第9条第1項)。
- 当該品目に対する紛争解決基準がない場合
・ 品目別消費者紛争解決基準において、当該品目に対する紛争解決基準がない場合、同基準が定めた類似した品種の紛争解決基準が準用されることがあります(「消費者基本法施行令」第9条第2項)。
- 同一被害に対する紛争解決基準が複数の場合
・ 品目別消費者紛争解決基準において、同一被害に対する紛争解決基準が二種類以上定められている場合は、消費者の選択した紛争の解決基準が適用されます(「消費者基本法施行令」第9条第3項)。
一般的な消費者紛争解決基準
一般的な消費者紛争解決基準
- 一般的な消費者紛争解決基準とは、紛争の解決の一般的原則を定めた基準のことであり、品目別消費者紛争解決基準の上位基準となります。一般的な消費者紛争解決基準には、物品またはサービス(以下、「物品等」と略します。)の修理・交換・払い戻し・賠償等の方法、品質保証期間・部品の保有期間等の基準が定められています(「消費者基本法施行令」第8条第1項・第2項)。
一般的な消費者紛争解決基準の内容
- 事業者は物品等[物品等の取引に付随して提供される景品類を含む]の瑕疵・債務不履行等による消費者の被害に対し、以下の基準により修理・交換・払い戻しまたは賠償をし、または契約の解除・履行等を行わなければなりません(「消費者基本法施行令」別表1第1号)。
・ 修理・交換・払い戻しの費用の負担
√ 品質保証期間中の修理・交換・払い戻しに掛かる費用は、事業者が負担します(「消費者基本法施行令」別表1第1号ア目本文)。
√ ただし、消費者の取扱上の不注意、天災地変による故障・損傷、指定の修理店・設置店でない者による修理・設置により物品等が変更・損傷を受けた場合は、事業者は費用を負担しません(「消費者基本法施行令」別表1第1号ア目ただし書き)。
・ 修理の基準
√ 消費者が修理を依頼した日より1か月が過ぎた後も事業者が修理した物品等を消費者に引き渡すことができない場合は、①品質保証期間以内の場合は、同種の物品等と交換するか、あるいは同種の物品等と交換できない場合は払い戻さなければなりません。②品質保証期間が過ぎたときは、購入価格を基準に定額を減価償却した金額に10%を加えて払い戻さなければなりません(「消費者基本法施行令」別表1第1号イ目)。
√ 物品等を有償修理した日より2か月以内に消費者が正常に使用した過程で、その修理した部分に同一の故障が再発した場合、無償修理を行い、もし修理できない場合は以前払われた修理費を払い戻さなければなりません(「消費者基本法施行令」別表1第1号ウ目)。
・ 交換の基準
√ 物品等(割引販売された物品等を含む)の交換は、同種の物品等としますが、同種の物品等と交換することができない場合は、同種の類似した物品等と交換します(「消費者基本法施行令」別表1第1号エ目本文)。
√ ただし、同種の物品等と交換することは不可能で、消費者が同種の類似した物品等と交換することを希望しない場合は、払い戻さなければなりません(「消費者基本法施行令」別表1第1号エ目ただし書き)。
・ 払い戻しの基準
√ 払い戻しの金額は、取引の際に交付された領収書等に記された物品等の価格を基準にします(「消費者基本法施行令」別表1第1号カ目本文)。
√ ただし、領収書等に記された価格について争いがある場合は、領収書等に記された金額と異なる金額を基準にしようとする者が、その異なる金額が実際の取引価格であることを立証しなければなりません(「消費者基本法施行令」別表1第1号カ目ただし書き)。
√ 一方、領収書等がないなどの事由により実際の取引価格を立証できない場合は、その地域で取引される通常の価格を、払い戻しの金額とします(「消費者基本法施行令」別表1第1号カ目ただし書き)。
品目別消費者紛争解決基準
品目別消費者紛争解決基準
- 品目別消費者紛争解決基準は、一般的な消費者紛争解決基準により品目別に消費者被害を補償できる基準を定めたもので、「対象品目」と「品目別被害補償の基準」により構成されています(「消費者基本法施行令」第8条第3項)。
- 品目別消費者紛争解決基準において、同一の被害について紛争の解決基準を二種類以上定めている場合、消費者が紛争の解決基準を選ぶことができます。紛争の品目については、消費者紛争解決基準がない場合には、同基準が定める類似した品目の消費者紛争解決基準を準用することができます(「消費者基本法」第16条第2項、「消費者基本法消費者基本法」第9条第2項及び第3項)。
品目別消費者紛争解決基準の内容
- 対象品目及び品目別解決基準は以下の通りです(「消費者紛争解決基準」別表1及び別表2)。
区分
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細部分類
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食生活
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外食サービス業(2業種) 食料品(19業種) 農水畜産物(7業種)
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保健/医療
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医療業(3業種) 医薬品及び化学製品(10品種) 産後調理院(1業種) 美容業(4業種)
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住居/施設
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建具工事業(1業種) 住宅建設業(1業種) 駐車場業(2業種) 宿泊業(1業種) 不動産仲介業(1業種) 警備サービス業(1業種)
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生活用品
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工業製品(1業種) 貴金属・宝石(1業種) 中古家電の売買業(1業種) 工業製品(30業種)
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衣生活
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工業製品(1業種) 中古家電の売買業(1業種) 洗濯業(1業種) アクセサリー(1業種) 貴金属・宝石(1業種) 鞄類(1業種) 革製品(1業種) 靴(1業種) 傘類(1業種) 衣服類(1業種) 家具(1業種) 洗濯業(1業種)
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自動車/機械類
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中古自動車売買業(1業種) 自動車整備業(1業種) 自動車貸出業(1業種) 自動車牽引業(1業種) 自動車教習所業(1業種)
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情報通信
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スマートフォン(1業種) 通信結合商品(1業種) 超高速インターネット通信サービス業(1業種) インターネットコンテンツ業(1業種) インターネットショッピング業(1業種) 移動通信サービス業(1業種) 衛星放送及び有線放送(2業種)
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金融/保険
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電子決済手段発行法(1業種) ソーシャルコマース(1業種) 電子貨幣業(1業種) クレジットカード業(1業種) 商品券関連業(1業種)
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教育/文化
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自動車学校(1業種) 国際結婚仲介(1業種) 結婚準備代行業(1業種) 学院(塾)運営業及び生涯教育施設運営業(2業種) 留学手続き代行業(1業種) ブライダル業(1業種) 語学研修関連業(2業種) ペット販売業(1業種) 写真現像及び撮影業(1業種) 文化用品・その他(4業種) 公演業(2業種) 考試院(コシウォン)運営業(1業種)
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レジャー/スポーツ
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ゴルフ場(1業種) リゾート・コンドミニアム業(1業種) 体育施設業及びレジャーサービス業(3業種)
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観光/運送
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運転代行(1業種) 宅配便及びクイックサービス業(1業種) 引っ越し貨物取扱事業(1業種) 運輸業(9業種) 旅行業(2業種)
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その他
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掃除代行サービス業(1業種) 移民代行サービス業(1業種) 葬祭業(1業種) 物品レンタルサービス業(1業種) 公共サービス(3業種) 結婚情報業(1業種) オンラインゲームサービス業(1業種)
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全体品目(クリック)
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品目別消費者紛争解決基準の適用方法
- 消費者は紛争が発生した物品等が上記の「消費者紛争解決基準」別表1の「対象品種」のうち、どの品目に該当するかを確認し、「消費者紛争解決基準」別表2の「品目別解決基準」において当該品目の被害タイプによる解決の基準を確認します。
- 例えば、新製品のテレビを買った後、正常に使用していたが、購入して5日目にテレビ画面が正常に映らない故障が発生した場合、テレビは工業製品のうち家電製品に該当し、当該被害は以下の表の第一被害タイプに該当しますので、そのテレビを買った消費者は他のテレビと交換してもらうか、購入した金額の払い戻しを受けることができます(「消費者紛争解決基準」別表2第9号家電製品)。
< 家電製品の紛争の解決基準 >
被害タイプ
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補償の基準
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購入後、10日以内に正常な使用状態で発生した性能・機能上の瑕疵により重要な修理を要する場合
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製品の交換または購入金額の払い戻し
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購入後、1か月以内に正常な使用状態で発生した性能・機能上の瑕疵により重要な修理を要する場合
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製品の交換または無償修理
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品質保証期間内に正常な使用状態で発生した性能・機能上の瑕疵
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瑕疵発生の場合
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無償修理
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修理できない場合
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製品の交換または購入金額の払い戻し
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交換できない場合
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購入金額の払い戻し
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交換した製品が1か月以内に重要な修理を要する場合
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購入金額の払い戻し
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消費者が修理を依頼した製品を事業者が紛失した場合
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品質保証期間内
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製品の交換または購入金額の払い戻し
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品質保証期間が経過した後
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定額減価償却した金額に10%を加算して払い戻し(最高限度額:購入価格)
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部品保有期間内に修理用部品を保有していないために発生した被害
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品質保証期間内
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正常な使用状態で性能・機能上の瑕疵により発生した場合
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製品の交換または購入金額の払い戻し
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消費者の故意・過失による故障の場合
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有償修理に該当する金額を徴収し、製品を交換
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品質保証期間が経過した後
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定額減価償却した残額に購入価格の10%を加算して払い戻し
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製品購入の際、運送の過程で発生した被害
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製品の交換(ただし、専門の運送機関に委託した場合、販売者が運送会社に対し、求償権を行使する)
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事業者が製品を設置中に発生した被害
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製品の交換
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