物品の購入契約
契約の締結
- 物品を購入するということは、消費者と事業者間で物品の購入契約を締結したことを意味します。このような物品の購入契約は、原則的に消費者が契約の申込みの意思表示をし、それに対して事業者が承諾することで成立します。
購入意思の撤回
- 物品を購入した後、消費者の純粋な心変わりにより物品を返品することを、契約の申込みの撤回と言います。しかし、原則的には契約の申込みは撤回できません(「民法」第527条)。
※しかし、一般的な取引の場合、販売者の販売方針によっては、物品の価値が毀損しない限り物品の返品に伴う費用は消費者が負担するという条件で、返品を受け入れることも多いです。
- ただし、韓国の法律では、割賦取引、電子商取引、通信販売、訪問販売などの取引においては、衝動買いから消費者を保護するため、一定期間、再考した後に契約締結意思を撤回できるよう、消費者に「契約の申し込みの撤回権(クーリングオフ)」を認めています。
サービスの利用契約
約款による契約の締結
- 公共交通機関を利用することも、運送サービスの利用契約を締結したものとみなされます。しかしこのような場合、多数の消費者といちいち契約を締結するのは困難であるため、約款により解決しています。
- 約款とは、契約の一方の当事者が、特定の契約を不特定多数の相手と繰り返し締結することを予定し、それに備えて一定の形式により準備した契約の内容のことをいいます。(「約款の規制に関する法律」第2条第1号)。
- これにより、火災・生命などの保険契約、ガス・電気・水道などの供給契約、地下鉄・バス・タクシー・航空機・船舶などの運送契約、預金・貯蓄契約、郵便・電話などの利用契約、映画館・劇場などの入場契約、倉庫賃借契約、病院の診療契約などでは、契約の内容について、一つ一つ個別の合意はなされず、事業者が前もって定めた定型的な契約条項が消費者に提示され、消費者はそれを包括的に受け入れ、それに応じることで契約が成立します。
- もし、約款が定めている事項について、事業者と消費者が約款の内容とは異なる合意をした事項がある場合には、その合意事項(個別約定)が約款に優先します(「約款の規制に関する法律」第4条)。
販売/取引タイプ別物品購入の際のご注意
販売のタイプ
- 販売方法は大きく分けて、商品を売り場に展示し、消費者に販売する「一般販売」と、売り場以外の販売形態の「特殊販売」に分類することができます。特殊販売には訪問販売、通信販売(電子商取引、テレビショッピングを含む)、電話による勧誘販売、連鎖販売取引(マルチ商法)、割賦取引があります。
一般販売
- 消費者が一般販売の方法により物品を購入した場合、一般契約の締結として、契約に関する法令及び約款に基づいて処理されます。
特殊販売
区分
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注意事項
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訪問販売
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訪問販売員の住民登録証、許可証または登録証の提示を必ず要求します。また、訪問販売員の氏名、会社の住所・商号、販売員が適切な身分証を持っているかどうかを確認します。 訪問販売の主要品目は健康食品、化粧品、カー用品、真空掃除機、学習教材など非常に様々です。被害の主なタイプは事業者のクーリングオフの拒否、過度の違約金の請求、契約内容の未履行などです。
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電子商取引及び通信販売 (テレビショッピングを含む)
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電子商取引及び通信販売は、一般的な商取引行為とは異なり、消費者が商品などを直接見ずに表示内容・広告などに依存して購入するので、消費者が商品の品質などを直接確認することができません。さらに、消費者に商品などが届くまで一定の期間が掛かるため、その過程で破損・紛失などの事故が発生することがあります。したがって、以下の内容を必ずご確認ください。 ① 商品の内容、価格、品質、配達費用の負担、返金可能な時期、返品の際の費用の負担、返品の条件など、広告や表示内容を必ず入念に確認します。 ② 注文の取消、返品等に備え、契約書や広告、レシートなどを必ず保管します。インターネット取引の際にも、契約事項は必ずプリントアウト・保存して紛争に備えておく必要があります。 ③ アフターサービス、部品交換が可能か、メンテナンス費用などについても必ず入念に調べておきます。 通信販売は広告、パソコン画面、テレビ画面などから判断して購入するので、広告または画面で見た物品の状態と、実際に受け取った物品の状態とが異なる場合があります。したがって消費者は、通信販売により物品を購入する場合、画面のスクリーンショット、広告のチラシなどをとっておくことで、後に発生し得る紛争に備えることをお勧めします。
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連鎖販売取引(マルチ商法)
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当該会社の本店所在地を管轄する市・道、または控除組合などにその会社が登録されている連鎖販売取引業者であるかどうかを確認します。登録された連鎖販売取引業者の場合、控除組合による被害補償が可能なので、管轄の市・道または控除組合(直接販売控除組合、韓国特殊販売控除組合)に登録しているかどうかを確認し、登録された業者である場合、加入前に「連鎖販売取引業者情報公開」を通じて、売上、報酬、消費者苦情処理などについて必ず確認しておきます。
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割賦取引
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衝動買いによる被害を最小限に抑えるため、購入者が割賦契約の内容を理解できるよう、スケジュールについて表示して告知し、契約締結の際には記載した契約書を提供するよう定められています(「割賦取引に関する法律」第5条第1項)。したがって、契約書に当該内容が明示されているかどうか、記載漏れはないか、虚偽の事実はないか、などについて確認しておきます。
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継続的取引
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継続的取引の契約は、一回限りの一般取引とは異なり、間違って契約してしまうと被害が継続してしまうため、契約の前に契約の内容・期間・約款などについて慎重に検討します。契約を締結する場合、必ず書面で契約を交わし、契約書はきちんと保管しておかなければなりません。 約款にない内容は、特約事項として記載し、訪問販売員や営業社員による口頭での約束は証明できないため、契約書に記載しておくようにしなければなりません。
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- 消費者が特殊販売の方法により物品を購入した場合で純粋な心変わりにより物品を返品するときは、販売方法によって、関係法令に定められた一定期間内であれば、事業者に契約の申込みの撤回の意思表示をすることで返品できます。
※ 契約の申込みの撤回の意思表示は、口頭ではなく郵便局での内容証明郵便を用いて行うと、その後紛争が発生した場合に証拠を確保するのに役に立ちます。
販売方法
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契約の申込みの 撤回事由
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契約の申込みの 撤回期間
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契約の申込みの 撤回の際における 財貨などの返還費用
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訪問販売 及び 連鎖販売取引 (マルチ商法)
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1. 財貨などの提供が契約書の交付より早い、または同一の場合
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契約書を受け取った日より14日
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消費者が財貨などを返還するために必要な費用は販売者などが負担(「訪問販売等に関する法律」第9条第9項及び第18条第8項)。
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2. 財貨などの提供が契約書の交付より遅い場合
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財貨だどの供給を受け、あるいは供給が始まった日から14日
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3. 販売者などから契約書を受け取っていない場合
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販売者等の住所を知った日または知り得た日より14日
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4. 販売者等の住所などが記されていない契約書を受け取った場合
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販売者等の住所を知った日または知り得た日より14日
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5. 販売者などの住所変更などの理由により1、2による期間内に契約申込みの撤回などができない場合
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販売者等の住所を知った日または知り得た日より14日
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6. 契約書に契約申込みの撤回等に関する事項が記されていない場合
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契約申込みの撤回等が可能であることを知った日または知り得た日より14日
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7. 販売業者等が契約申込みの撤回等を妨害した場合
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妨害行為が終了した日より14日
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電子商取引及び 通信販売
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財貨等の提供が契約書の交付より早いまたは同一の場合
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事業者から契約書を受け取った日より7日
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原状回復義務により消費者が財貨などを返還するのに必要な費用は自ら負担しなければなりませんが、財貨等の内容が表示・広告の内容と異なり、または契約内容通りに履行されなかった場合、その返還費用は事業者が負担します(「電子商取引等における消費者保護に関する法律」第18条第9項及び第10項)。
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財貨等の提供が契約書の交付より遅い場合
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財貨等の供給を受け、または供給が始まった日より7日
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割賦取引
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契約書を受け取っていない場合または事業者の住所などが記載されていない契約書を受け取った場合
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事業者の住所を知った日または知り得た日より7日
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原状回復の義務により消費者が財貨等を返還するのに必要な費用は割賦取引業者が負担します(「割賦取引に関する法律」第10条第10項前段)。
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事業者が住所を変更する等の事由により撤回期間中に契約申込みの撤回ができなかった場合
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事業者の住所を知った日または知り得た日より7日
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財貨等の内容が表示・広告と異なり、または契約内容通り履行されていない場合
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財貨等の供給を受けた日より3か月以内またはその事実を知りあるいは知り得た日より30日以内
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物品の使用時の注意事項
物品の使用時の注意事項
- 後に発生しうる問題等に備えるため、消費者は製品の購入の際に作成した契約書、領収書、購入取引確認書、取扱説明書、保証書などを必ずきちんと保管しておきます。
- 製品を使用する際には、取扱説明書に従って使用します。説明書に従わずに製品を使用して問題が発生する場合、無償保証を受けられないこともあります。
被害救済に関する法規・制度
被害救済に関する法規・制度
法律名
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関連内容
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「民法」
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詐欺販売契約の取消(「民法」第140条から第146条まで) 契約の解除・解約(「民法」第543条から第553条まで) 債務不履行・不法行為による損害賠償請求(「民法」第750条)
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「訪問販売等に関する法律」
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訪問販売・連鎖販売取引の契約申込みの撤回(「訪問販売等に関する法律」第8条、第9条、第17条及び第18条) 継続的取引の契約の終了(「訪問販売等に関する法律」第31条及び第32条)
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「電子商取引等における消費者保護に関する法律」
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電子商取引・通信販売・テレビショッピングの契約申込みの撤回(「電子商取引等における消費者保護に関する法律」第17条及び第18条)
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「割賦取引に関する法律」
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割賦取引の契約申込みの撤回(「割賦取引に関する法律」第8条及び第10条) クレジットカード契約における抗弁権の行使(「割賦取引に関する法律」第16条)
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「約款の規制に関する法律」
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約款の交付・説明の義務に違反した場合、当該約款の契約内容の主張は不可(「約款の規制に関する法律」第3条) 不公正約款条項の無効及び使用禁止(「約款の規制に関する法律」第6条及び第17条)
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「消費者基本法」 「消費者紛争解決基準」
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被害類型及び賠償の基準[「消費者基本法」第16条及び「消費者紛争解決基準」
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その他消費者に関する個別法
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事業者の不当行為に対する判定基準の根拠を提供(販売・製造の禁止、虚偽表示・誇大広告の禁止等)
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