仮差押
保全処分としての仮差押
- 「保全処分」とは、強制執行のために、執行名義を得るまでの間に債務者が執行を不可能にし、または困難にさせる措置を取ることができないようにするため、債務者の財産に関する権利関係や事実状態を現在の状態に留めておく処分のことをいいます。
- 「仮差押」とは、金銭債権や金銭により換算できる債権の債権者が将来の執行を保全するため、債務者の責任財産を暫定的に差し押え、その処分権を剥奪する保全処分のことをいいます(「民事執行法」第276条)。
仮差押の機能及び長所
- 仮差押は債務者に債務弁済を強制する間接的な役割を果たすこともあり、消滅時効を中断する直接的な役割も果たします。
- 消滅時効は仮差押により中断します(「民法」第168条)。
仮差押の申立の方法
- 仮差押手続は仮差押の物がある場所を管轄する地方裁判所や、本案の管轄裁判所が専属となって管轄します(「民事執行法」第278条及び第21条)。
- 仮差押申立書は、以下の事項が記載されなければなりません(「民事執行法」第279条第1項)。
· 当事者及び法定代理人の表示(「民事訴訟法」第249条第1項を参照すること)
· 請求債権の表示、その請求債権が一定の金額でない場合は金銭に換算した金額
· 仮差押の理由となる事実の表示(「民事執行法」第277条)
- 仮差押申立に対する裁判は普通、弁論を開かないで行うため(「民事執行法」第280条第1項)、請求債権と仮差押の理由について疎明しなければなりません(「民事執行法」第279条第2項)。
仮差押の決定
仮差押の決定
- 仮差押申立が適法で仮差押の要件が備えられれば、仮差押命令を発令します(「民事執行法」第280条を参照すること)。
仮差押決定の執行
- 仮差押命令は、執行名義による命令後、直ちに執行力が生じます。
· したがって、仮差押裁判の執行は、執行文が付与されなくても実行することができます(「民事執行法」第292条第1項)。
- 仮差押命令があれば、債権者は2週間以内に執行を行わなければなりません(「民事執行法」第292条第2項)。
· 債権者は債務者の不動産、船舶、有体動産等に仮差押の執行申立をすることができます(「民事執行法」第293条から「民事執行法」第297条まで)。
仮差押執行の効果
- 仮差押が執行されれば、債務者は目的物を処分することができません。
- 債務者が仮差押執行を受けた財産を処分する場合は、仮差押債権者との間でその処分が無効となります。
- 仮差押執行後、債権者が本案訴訟において勝訴し、執行名義を取得して本執行の要件を備えれば、仮差押は本差押へと移転します。