遺留分制度
遺留分制度の意義
- 「遺留分」とは、相続財産のうち、相続を受けた者が任意に処理できず、一定の相続人のために法律上必ず残しておくべき一定の部分のことをいいます(出典:国立国語院、標準国語大辞典)。
- 「民法」は遺言による財産処分の自由を認めているため、被相続人が遺言で他人や相続人の一部にのみ遺贈を行うと、相続人に相続財産が移転されないことがあります。
· しかし、相続財産処分の自由を無制限に認めることになると、家族の生活の安定を乱し、被相続人の死亡後、相続人の生活の保障が侵害されます。
· これらの不合理を防ぎ、相続人の生活を保障するために、「民法」では遺留分制度を認めています。
遺留分権利者の遺留分
遺留分権利者
- 遺留分を有する者は、被相続人の直系卑属、被相続人の直系尊属、被相続人の兄弟姉妹または配偶者である相続人です(「民法」第1112条)。
- 胎児及び代襲相続人も遺留分権を有します(「民法」第1000条第3項及び第1118条)。
※ ただし、相続を放棄した者は、相続人でないため、遺留分の返還を請求できません。
遺留分権利者の遺留分(「民法」第1112条)
順位
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遺留分権利者
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遺留分の割合
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1
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被相続人の直系卑属
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法定相続分×2分の1
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2
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被相続人の直系尊属
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法定相続分×3分の1
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3
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被相続人の兄弟姉妹
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法定相続分×3分の1
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※ 被相続人に配偶者がいる場合、第1順位または第2順位の遺留分権利者とともに、遺留分の権利を有し、その遺留分の割合は法定相続分の2分の1となります。
遺留分の計算
遺留分の計算
- 遺留分は被相続人の相続開始時において、財産の価額に贈与財産の価額を加算し、債務の全額を控除して計算します(「民法」第1113条第1項)。
遺留分額の計算
- (積極相続財産額+贈与額-相続債務額)×(各相続人の遺留分の割合)-特別受益額
遺留分減殺請求権
遺留分減殺請求権
- 遺留分権利者が被相続人の贈与及び遺贈により、その遺留分に不足が生じたときは、不足している限度において、その財産の返還を請求することができます(「民法」第1115条第1項)。
· このとき、被相続人による贈与は原則、相続開始前の1年以内のものであるべきですが、相続人に対する贈与または遺留分が侵害されることを知った上で行った贈与は、期限の制限なしに該当します(「民法」第1114条及び大法院199 6年9月2 5日宣告95タ17885判決)。
返還の相手方
- 自分の遺留分額を侵害して遺贈または贈与を受けた者が、遺留分請求の相手方となります。
請求の方法
- 返還の請求は裁判上または裁判外の方法により行うことができ、裁判上の方法で行う場合、民事訴訟手続に基づいて行われます。
返還の順位
- 遺贈の返還を受けた後でないと、受贈者が贈与を受けたものを請求することはできません(「民法」第1116条)。
返還の方法
- 遺留分の返還を請求する場合、贈与を受けた者が複数のときは、各自が得た贈与価額に比例して返還します(「民法」第1115条第2項)。
減殺請求権の消滅時効
- 返還の請求権は、遺留分権利者が相続の開始と変換する必要がある贈与、または遺贈の事実を知った時から1年以内にしないと、時効により消滅します。相続が開始したときから10年が経過した場合も、時効により消滅します(「民法」第1117条)。
その他の事項
代襲相続人の遺留分減殺請求権
- 相続人になる直系卑属または兄弟姉妹が相続開始前に死亡し、または欠格者となった場合(「民法」第1000条1項第1号及び第3号)、その直系卑属がいるときはその直系卑属が死亡し、または欠格者の順位に代わって相続人になり、このような代襲相続人も遺留分減殺請求を行うことができます(「民法」第1118条及び第1001条)。
· 配偶者が代襲相続人の場合でも、遺留分減殺請求権を行使することができます(「民法」第1118条及び第1010条第2項)。
- 死亡または欠格者に代わって相続人になった者、つまり代襲相続人の遺留分は、死亡または欠格者の相続分に従います(「民法」第1118条及び第1010条第1項)。
· 死亡または欠格者の直系卑属が複数の場合(「民法」第1010条第1項)、その遺留分は死亡または欠格者の相続分の限度において遺留分によりこれを定めます(「民法」第1118条及び第1010条第2項)。
特別受益者の遺留分減殺請求権
- 共同相続人のうち、被相続人から財産の贈与または遺贈を受けた者がいる場合、その受贈財産が自分の相続分に達していないときは、その不足している部分を限度にして相続分があり、遺留分請求権も有します(「民法」第1118条及び第1008条)。