相続放棄
相続放棄の概念
- 「相続放棄」とは、相続人が相続の効力を消滅させる目的で行う意思表示をいい、相続放棄をするには、家庭裁判所に相続放棄を申告する必要があります(「民法」第1041組)。
· 相続放棄は、相続人としての資格を放棄することで相続財産の全部の放棄だけが認められます。したがって、一部、または条件付き放棄は認められません。
放棄申告
相続放棄の方法
- 相続人が相続を放棄するときは、相続が開始したことを知った日から3か月以内に相続開始地の家庭裁判所に放棄を申告する必要があります(「民法」第1041条、第1019条第1項及び「家事訴訟法」第44条第1項第6号)。
相続放棄申告書の提出
- 相続放棄を申告するときは、該当する事項を記載し、申告人または代理人が記名捺印または署名した書面を提出しなければなりません(「家事訴訟規則」第75条第1項及び「家事訴訟法」第36条第3項)。
申告の受理
-家庭裁判所は、上記の申告書の記載に誤りがなければ、これを受理します。
相続放棄の期限
相続放棄の期限
- 相続人は相続が開始したことを知った日から3か月以内に放棄することができます。しかし、その期限は、利害関係人または検事の請求により家庭裁判所がこれを延長することができます(「民法」第1019条1項)。
特別限定承認の期限
- 相続人が相続財産を調査したにもかかわらず、相続人が、相続債務が相続財産を超えるという事実を重大な過失なく相続が開始したことを知った日から3か月以内に知らずに相続を放棄しておらず、単純承認として議題となる場合、その事実を知った日から3か月以内に限定承認を行うことができます(「民法」第1019条第3項)。
- 相続人が相続の承認または放棄前に相続財産を調査したにもかかわらず、未成年者である相続人が相続債務が相続財産を超過する相続を成年になる前に単純承認した場合には、成年になった後、その相続の相続債務が相続財産を超過する事実を知った日から3か月内に限定承認することができます。未成年者である相続人が「民法」第1019条第3項による限定承認をしなかったりすることができなかった場合も同様です(「民法」第1019条第4項)。
制限能力者の相続承認・放棄の期限
- 相続人が制限能力者の場合、相続が開始したことを知った日から3か月の期限は、その親権者または後見人が相続が開始したことを知った日から起算します(「民法」第1020条)。
相続放棄期限の計算に関する特則
- 相続人が放棄せず相続が開始したことを知った日から3か月以内に死亡した場合、その相続人が自分の相続が開始したことを知った日からその期限を起算します(「民法」第1021条)。
相続放棄の効果
相続放棄の遡及効
- 相続放棄は、相続が開始した時に遡及し、その効力を有します(「民法」第1041条)。
放棄した相続財産の帰属
- 相続人が複数の場合、ある相続人が相続を放棄した場合、その相続分は、他の相続人の相続分の割合に合わせてその相続人に帰属します(「民法」第1043条)。
放棄した相続財産の管理
- 相続人が相続を放棄した後は、その放棄により相続人になった者が相続財産を管理することができるまでのみ、その財産の管理を継続します(「民法」第1044条第1項)。
相続放棄の取消
取消は原則禁止
- 相続放棄は、相続が開始したことを知った日から3か月以内の期限にも、これを取消できません(「民法」第1024条第1項及び第1019条第1項)。
取消の例外的な許可
- ただし、このような場合でも、相続人が錯誤・詐欺・強迫を理由に相続の承認を行った場合、これを理由に相続の承認を取消すことができます。しかし、その取消権は、追認できる日から3か月、承認または放棄した日から1年以内に行使しなければ、時効により消滅します(「民法」第1024条第2項)。
- 相続放棄を取り消すには、相続放棄審判を行った家庭裁判所に申告人または代理人が記名捺印または署名した書面をもって申告する必要があります(「家事訴訟規則」第76条第1項)。
- 相続放棄の取消申告書には、申告人または代理人の印鑑証明書を添付する必要があります(「家事訴訟規則」第76条第3項及び第75条第2項)。