相続の単純承認
相続の単純承認の概念
- 「相続の単純承認」とは、相続の効果を拒否しないという意思表示のことをいいます。
· 相続人が相続の単純承認を行ったときは、制限なしに被相続人の権利義務を承継します(「民法」第1025条)。
法定単純承認
- 次の事由がある場合、相続人が単純承認を行ったものとみなします(「民法」第1026条)。
・相続人が相続財産に対する処分の行為をした場合(例えば、相続財産である不動産を他の人に売り、登記を渡した場合、相続財産である株式を売却した場合、相続財産である預金債権で自分の借金を返済した場合など)
・相続人が相続承認などの考慮期間(「民法」第1019条第1項)に限定承認または放棄をしなかった場合
・相続人が限定承認または放棄をした後、相続財産を隠匿し、または不正消費し、あるいは故意に財産目録に記入しなかった場合
法定単純承認の例外
- 相続人が相続を放棄することにより後順位の相続人が相続を承認した場合、相続を放棄した者が相続財産を不正消費しても、相続は承認されません(「民法」第1027条)。
相続の単純承認の期限
相続の単純承認の期限
- 相続人は相続が開始したことを知った日から3か月以内に単純承認を行うことができます。しかし、その期限は、利害関係人または検事の請求により家庭裁判所がこれを延長することができます(「民法」第1019条第1項)。参考までに、単純承認は限定承認や相続放棄をこの期限内に行っていない場合でも、承認を行ったとみなされるため(「民法」第1026条第2号)、早期に単純承認を行わなければならない特別な理由がない場合は、この期限内に行わなくても構いません。
▶ 相続の単純承認のための期限延長許可
- 請求権者は、相続債権者等、利害関係人または検事です(「民法」第1019条第1項ただし書)。
- 請求期限は、相続が開始したことを知ったときから3か月以内です。
- 管轄裁判所は、相続開始地の家庭裁判所です(「家事訴訟法」第44条第1項第6号)。
特別限定承認の期限
- 相続人が相続の承認または放棄する前に相続財産を調査したにもかかわらず、相続人は相続の債務が相続財産を超えるという事実を、重大な過失なく相続が開始したことを知った日から3か月以内に知らずに単純承認(「民法」第1026条第1号及び第2号の規定により単純承認したものとみなした場合を含む)をした場合、その事実を知った日から3か月以内に限定承認をすることができます( 「民法」第1019条第3項)。
- 相続人が相続の承認または放棄前に相続財産を調査したにもかかわらず、未成年者である相続人が相続債務が相続財産を超過する相続を成年になる前に単純承認した場合には、成年になった後、その相続の相続債務が相続財産を超過する事実を知った日から3か月内に限定承認することができます。未成年者である相続人が「民法」第1019条第3項による限定承認をしなかったりすることができなかった場合も同様です(「民法」第1019条第4項)。
制限能力者の相続承認の期限
- 相続人が制限能力者の場合、相続が開始したことを知った日から3か月の期限は、その親権者または後見人が、相続が開始したことを知った日から起算します(「民法」第1020条)。
承認期限の計算に関する特則
- 相続人が承認していない相続が開始したことを知った日から3か月以内に死亡したとき、その相続人がその自分の相続が開始したことを知った日からその期限を起算します(「民法」第1021条)。
相続承認の取消
取消は原則禁止
- 相続の承認は、相続が開始したことを知った日から3か月以内の期間でも、これを取消できません(「民法」第1024条第1項)。
取消の例外的な許可
- ただし、このような場合でも、相続人が錯誤・詐欺・強迫を理由に相続の承認を行った場合、これを理由に相続の承認を取消すことができます。しかし、その取消権は、追認できる日から3か月、承認または放棄した日から1年以内に行使しなければ、時効により消滅します(「民法」第1024条第2項)。