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退職給付制度
退職金制度の中間精算
退職金中間精算の概念
- 「退職金中間精算」とは、労働者が退職金中間精算の事由により退職する前に継続勤務期間に応じた退職金をあらかじめ精算し、支給してもらうことをいいます(「労働者退職給付保障法」第8条第2項前段)。
退職金中間精算を申請する前の確認
退職金中間精算は、労働者が中間精算の事由に当てはまれば雇用主に申請できますが、雇用主が中間精算の申請を承諾せず、支給されないこともありますので、あらかじめ支給可否を確認してください。
退職金中間精算の事由
- 雇用主は、以下の事由により労働者が要求する場合、労働者が退職する前に当該労働者の継続勤務期間に応じた退職金をあらかじめ精算し、支給することができます(「労働者退職給付保障法」第8条第2項前段、「労働者退職給付保障法施行令」第3条第1項及び「退職年金制度受給権の担保提供及び退職金中間精算の事由と要件、担保限度などに関する告示」]。
· 持ち家のない労働者が本人名義で住宅を購入する場合
Q1. 持ち家の有無や住宅購入の判断基準は何でしょうか。
A1. 持ち家の有無や住宅購入の判断基準は以下のとおりです(雇用労働部「退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)」2022.8.25.、49面)。

区分

内容

持ち家の有無

の判断

▪ 労働者が本人名義で所有している住宅がない場合をいい、労働者の属する世帯、すなわち世帯員全員が持ち家があってはいけないわけではない 

▪ 労働者中間精算(中途引き出し)を申請した日を基準に持ち家の有無を判断し、労働者が全生涯にわたって持ち家があってはいけないわけではない

住宅購入

の判断

▪ 労働者が本人名義で住宅を購入する場合を意味するので、配偶者単独名義で住宅を購入する場合は申請不可

※ 夫婦共同名義で住宅を購入する場合は申請可能
Q2. 所有していた住宅を売却して新たに住宅を購入する場合でも、持ち家がないとみなされますか。
A2-1. 中間精算(中途引き出し)の申請前に住宅を所有していた事例があったとしても、中間精算の申請日を基準に持ち家がなければ中間精算(中途引き出し)が申請できる(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』50面)。
A2-2.保有住宅の売却日と新しい住宅の取得日が同一である場合には、当該日付を基準に住宅の種類を異にして保有していることなので中間精算(中途引き出し)ができない(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』50面)。
· 持ち家のない労働者が居住を目的に「民法」第303条による伝貰金または「住宅賃貸借保護法」第3条の2による保証金を負担する場合(この場合は労働者が一つの事業に携わる間、1回に限る)
Q1. 伝貰金または保証金には月貰保証金も含まれますか。
A1. 居住目的の「民法」第303条による伝貰金または「住宅賃貸借保護法」第3条の2による賃借保証金の場合、賃貸借契約上の保証金には伝貰保証金だけではなく月貰保証金も含まれます(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』52面)。
Q2. 伝貰契約期間を延長する場合も中間精算できますか。
A2. 同一の場所で伝貰金(賃借保証金)を引き上げる内容で契約を新たに締結する場合には中間精算を申請できるが、増額なしに単に契約期間だけを延長する場合には中間精算を申請できません(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』53面)。
Q3. 本人名義ではなく配偶者など世帯主の名義で住宅賃貸借契約を締結する場合も中間精算できますか。
A3. 伝貰金(保証金)負担による中間精算(中途引き出し)は、持ち家がない加入者が住居を目的に本人名義または住民登録謄本などを通じて同一世帯であることが証明された世帯員の名義で契約を締結する場合には、中間精算(中途引き出し)を申請することができます(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』53面)。
· 労働者が以下のいずれかに該当し、6ヶ月以上の療養を必要とする人の病気や怪我に対する医療費を、その労働者が本人の年間賃金総額の1千分の125を超過して負担する場合
√ 労働者本人
√ 労働者の配偶者
√ 労働者またはその配偶者の扶養家族
Q1. 労働者またはその配偶者の扶養家族とは?
A1. ①60歳以上の直系尊属、②20歳以下の直系卑属または同居している養子、③20歳以下または60歳以上の兄弟姉妹、④「国民基礎生活保障法」に基づく基礎生活受給者、⑤「児童福祉法」に基づき家庭委託を受けて養育する児童などが扶養家族に該当します。この場合、「所得税法」第50条第1項における扶養家族の範囲を判断するに当たって所得水準は考慮しません(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』54面)。
Q2. 「生計を共にする扶養家族」とは?
A2. 住民登録票の同居家族として当該居住者の住所または居所で現実的に生計を共にする人をいいます(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』54面)。
Q3. 療養期間には入院期間のみ含まれますか。
A3. 療養とは病気または怪我などで一定の治療を必要とする場合をいいますので、入院治療だけではなく通院治療、薬物治療の期間も療養期間とみなされます(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』57面)。
Q4. 年間賃金総額の1千分の125算定はいつを基準としますか?
A4. 中間精算(中途引き出し)を申請した加入者の年間賃金総額は直前年度賃金の総額で算定します(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』56面)。
· 退職金中間精算の申請日から遡って5年以内に労働者が「債務者再生及び破産に関する法律」により破産宣告を受けた場合
· 退職金中間精算の申請日から遡って5年以内に労働者が「債務者再生及び破産に関する法律」により個人再生手続開始決定を受けた場合
Q1. 信用回復委員会の信用回復手続開始決定は中間精算の要件とみなされますか。
A1. 個人再生手続開始決定とは、「債務者再生及び破産に関する法律」を根拠に裁判所で決定することをいいます。したがって、信用回復委員会の信用回復支援制度による個人ワークアウト、プレワークアウト(事前債務調整)決定などはこれに該当しないため、中間精算の要件とはみなされません(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』59面)。
· 雇用主が従来の定年を延長または保障する条件で団体協約及び就業規則などによって一定の年齢、勤続時点または賃金額を基準に賃金を減らす制度を導入する場合
· 雇用主が労働者との合意により、所定労働時間を1日1時間または週5時間以上短縮し、その短縮した所定労働時間に従って労働者が3ヶ月以上続けて勤務することにした場合
· 「勤労基準法」の改正に伴い、1週間の労働時間の上限が60時間から52時間に短縮され、労働者の退職金が減少した場合
· 「災害及び安全管理基本法」第66条第1項各号の災害により被害を受けた場合で、次のいずれかに該当する場合
√ 災害が発生した地域の住宅施設が流失・全壊または半壊した被害[この場合、住宅設備は、加入者、配偶者、「所得税法」第50条第1項第3号の規定による労働者(配偶者を含む)と生計を一にする扶養家族が居住する施設に限る]
√ 災害により、加入者の配偶者、「所得税法」第50条第1項第3号の規定による加入者(配偶者を含む)と生計を一にする扶養家族が失踪した場合
√ 災害により、加入者が15日以上の入院治療が必要な被害を受けた場合
退職金中間精算の申請時期及び添付書類
- 持ち家のない労働者が本人名義で住宅を購入する場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』50面)

区分

内容

申請時期

住宅売買契約締結日から所有権移転登記後1ヶ月以内

必要書類

 

▪ 持ち家がない事実の確認√ 現居住地の住民登録謄本√ 現居住地の建物登記簿謄本または建築物管理台帳謄本√ 財産税(未)課税証明書(地方自治体から書類発給)

 

 

▪ 住宅購入事実の確認√ 住宅新築時:建築設計書及び工事契約書、建築許可書または着工申告済証√ 競売落札時:落札(売価)許可決定文(不動産の表示を含む)、代金支払期間通知書√ 住宅購入時:不動産売買契約書[分譲契約書(棟/戸数含む)]※ 登記後申請する場合:所有権移転登記後1カ月以内に申請、購入住宅の建物登記簿謄本または建築物管理台帳などで住宅購入確認

 

- 持ち家のない労働者が居住目的で伝貰金(保証金)を負担する場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』53面)

区分

内容

申請時期

住宅賃貸借契約締結日から残金支払日の1ヶ月後まで

添付書類

 

▪ 持ち家がない事実の確認√ 現居住地の住民登録謄本√ 現居住地の建物登記簿謄本または建築物管理台帳謄本√ 財産税(未)課税証明書(地方自治体から書類発給)

 

 

▪ 伝貰金または賃借保証金が必要であることの確認√ 伝貰·賃貸借契約書の写し√ 残金支払後に申請する時:残金を支払ってから1ヶ月以内に申請すべきであり、伝貰金(賃借保証金)支給領収書(写し)などを提出

 

- 労働者、労働者の配偶者または扶養家族が6ヶ月以上の療養をする場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』56面)

区分

内容

申請時期

 

▪ 中間精算の申請時点で病気·怪我などにより療養中または療養が終了すべきである ▪ ただし、療養中の場合は、既往の医療費支出額と支出が確定した医療費合算額が年間賃金総額の1千分の125を超えた時に申請でき、療養が終了した場合は療養終了日から1ヶ月以内申請可能

 

添付書類

 

▪ 療養が必要であることを確認するための添付書類 √ 医師の診断書もしくは所見書または健康保険公団の長期療養確認書など、病名とともに6ヶ月以上の療養が必要かどうかを確認できる書類 √ 療養終了後に申請する場合:療養終了日と治療費を負担したことが確認できる書類(療養終了日から1カ月以内で申請)

 

 

▪ 扶養家族の確認に必要な添付書類 家族関係証明書または住民登録謄本など配偶者または生計を共にする扶養家族であることが確認できる書類

 

▪ 支出医療費の確認に必要な添付書類

√ 医療機関などから発行された領収書、診療費請求書、診療費納入確認書、診療費詳細算定内訳書など医療費支出内訳が確認できる書類

√ 医療費支出証憑書類は患者の人的事項と疾病番号が確認できなければならない

 

▪ 年間賃金総額の確認に必要な添付書類

√ 加入者の源泉徴収領収書、労災保険雇用保険報酬総額申告書、給与明細書などに記入された賃金額が確認できる書類

※ 退職年金の場合、退職年金事業者が保有している加入者の賃金資料(使用者の賃金通知資料、使用者の負担金納入額から遡った賃金総額)で確認可能

- 申請日から遡って5年以内に労働者が「債務者再生及び破産に関する法律」により破産宣告を受けた場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』58面)

区分

内容

申請時期

 

破産宣告を受けた日から5年以内※ 免責·復権決定有無を問わず

 

添付書類

裁判所の破産宣告文

- 申請日から遡って5年以内に労働者が「債務者再生及び破産に関する法律」により個人再生手続開始決定を受けた場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』58面)

区分

内容

申請時期

 

個人再生手続開始決定を受けた日から5年以内。但し、申請時点で個人再生手続開始決定の効力が存在する場合に限る)※ 個人再生手続廃止決定、免責決定が行われた場合は個人再生手続開始決定の効力が終了しているため中間精算(中途引き出し)は不可

 

添付書類

個人再生手続開始決定文または個人再生手続弁済認可確定証明書

- 雇用主が従来の定年を延長または保障する条件で団体協約及び就業規則などによって一定の年齢、勤続時点または賃金額を基準に賃金を減らす制度を導入する場合(雇用労働部『退職給与制度マニュアル(中間精算処理指針)』60面)

区分

内容

申請時期

賃金ピーク制の実施に伴い賃金を減らされる労働者が原則として賃金ピーク制の実施日に申請

※ ただし、労使が退職金中間精算の申請時期を別段に定めた場合は、賃金ピーク制の実施日以降でも申請可能

使用者の確認書類

 

 ▪ 就業規則、団体協約など、賃金ピーク制の実施が確認できる書類▪ 労働契約書(年俸契約書)、給与明細書など、賃金ピーク制が適用される労働者であることを確認できる書類 ※ 上記の書類は事業場内に備え付けられている書類を通じて確認(使用者が保有している資料だけで賃金ピーク制の施行有無が判断できるため、中間精算申請書以外に労働者から別途の添付書類を受け取る必要はない)