対抗力
対抗力の概念及び要件
- 「対抗力」とは、賃借人が第三者、つまり賃借住宅の譲受人、賃貸する権利を承継した者、その他賃借住宅について利害関係を有する者に賃貸借の内容を主張できる法律上の力のことをいいます(「住宅賃貸借保護法」第3条第1項)。
- 賃貸借は、登記がなくても、賃借人が①住宅の引渡しと②住民登録を終えた時は、その翌日から対抗力が発生します(「住宅賃貸借保護法」第3条第1項)。
住宅の引渡し
- 「住宅の引渡し」とは、占有の移転のことをいいますが、住宅に対する事実上の支配が賃貸人から賃借人へと移転することをいいます。
住民登録及び転入の届出
- 転入の届出を行った時、住民登録されたものとみなされます(「住宅賃貸借保護法」第3条第1項)。
- 転入の届出は1つの世帯に属する者の全員またはその一部が居住地を移動する際に、新居住地の市長・郡守または区庁長に届け出るもので、世帯主等の届出義務者は新しい居住地への転入日より14日以内に転入の届出を行わなければなりません(「住民登録法」第10条、第11条及び第16条第1項)。
対抗力の発生時期
- 対抗力は賃借人が住宅の引渡しと住民登録を終えた時に、その翌日から第三者に対して効力を生じ、転入の届出を行った時に住民登録を終えたものとみなします(「住宅賃貸借保護法」第3条第1項)。
優先弁済権
優先弁済権の概念と要件
- 「優先弁済権」とは、賃借住宅が競売または公売される場合、賃借住宅の換価代金から、後順位権利者またはその他の債権者に優先して保証金の弁済を受ける権利のことをいいます(「住宅賃貸借保護法」第3条の2第2項)。
- 優先弁済権は賃借人が①対抗要件(住宅の引渡し及び転入届)と②賃貸借契約証書上の確定日付を揃えた場合に取得できます(「住宅賃貸借保護法」第3条の2第2項)。
確定日付の取得
- 「確定日付」とは、証書が作成された日付に住宅賃貸借契約書が存在していることを証明するために法律上認められる日付のことをいいます(大法院1998. 10. 2. 宣告98ダ28879判決)。
- 確定日付は住宅の所在地の邑・面事務所、洞住民センターまたは市(特別市・広域市・特別自治市は除き、特別自治道は含む)・郡・区(自治区をいう)の出張所、地方法院、その支院、登記所または公証人から付与されます(「住宅賃貸借保護法」第3条の6第1項)。
確定日付を受ける手順
- 賃借人の優先弁済権のための確定日付は、賃借人等が住宅賃貸借契約証書の原本または写本を持参し、住宅の所在地の邑・面事務所、洞住民センターまたは市(特別市・広域市・特別自治市は除き、特別自治道は含む)・郡・区(自治区をいう)の出張所、地方法院、その支院、登記所または公証人を訪れることで、付与を受けることができます(「住宅賃貸借契約証書上の確定日付の付与及び賃貸借情報提供に関する規則」第2条第1項)。
- 情報処理システムを利用して住宅賃貸借契約を締結した場合、当該住宅の賃借人は情報処理システムを通じて電子契約証書に確定日付の付与を申請することができます(「住宅賃貸借契約証書上の確定日付の付与及び賃貸借情報提供に関する規則」第2条の2)。
優先弁済権の発生時期
- 賃借人が住宅の引渡しと転入の届出を終えた当日またはそれ以前に住宅賃貸借契約書に確定日付を備えた場合には、住宅の引渡しと転入の届出を終えた翌日の午前0時から優先弁済権が発生します(大法院1999. 3. 23. 宣告98ダ46938判決)。
- 優先弁済権を行使するためには、優先弁済権の要件が競売手続きによる配当要求の終期の競落期日まで存続していなければなりません(大法院1997. 10. 10. 宣告95ダ44597判決)。