傷病補償年金の意義
傷病補償年金の意義
- 「傷病補償年金」とは、療養給付を受け取る労働者が、療養を始めてから2年が経過した日以降に、①その怪我や疾病が治癒されていない状態であること、②その怪我や疾病による重症療養状態等級が第1級から第3級の間に該当すること、③療養により就業できない状態が続くことを要件に、休業給付の代わりに労働者に支給する保険給付のことをいいます(「産業災害補償保険法」第66条第1項及び「産業災害補償保険法施行令」第65条第1項及び別表8)。
※ 「治癒」とは、怪我または疾病が完治し、または治療の効果をそれ以上期待できず、その症状が固定した状態に達したことをいいます(「産業災害補償保険法」第5条第4号)。
※ 「重症療養状態」とは、業務上の怪我または疾病による精神的または肉体的な損傷により労働能力を喪失し、または減少した状態で、その怪我または疾病が治癒されていない状態のことをいいます(「産業災害補償保険法」第5条第6号)。
傷病補償年金の支給要件
傷病補償年金の支給要件
- 療養給付を受ける労働者が、療養を始めて2年が経過した日以降、以下の要件すべてを満たす状態が続く場合、休業給付の代わりに傷病補償年金をその労働者に支給します(「産業災害補償保険法」第66条第1項、「産業災害補償保険法施行令」第65条第1項及び別表8)。
· その怪我や疾病が治癒していない状態であること
· その怪我や疾病による重症療養状態等級が第1級から第3級までの間に該当すること
· 療養により就業できていない状態であること
傷病補償年金の請求
傷病補償年金の請求
- 療養給付(再療養を含む)を受けている産業災害労働者が、傷病補償年金を請求するためには、傷病補償年金請求書に療養中の産業災害保険医療機関で発給された重症療養状態診断書を添え、勤労福祉公団に提出しなければなりません[「産業災害補償保険法施行令」第64条第1項、「補償業務処理規定」第40条第1項、別紙第7号書式及び別紙第8号書式]。
※ 傷病補償年金の申請は、勤労福祉公団に直接申請する方法以外に、勤労福祉公団の『雇用・産業災害保険トータルサービス』を通じてネットで申請することができます。
傷病補償年金の消滅時効
- 傷病補償年金を受ける権利は、傷病補償年金の受給権者となった日の翌日から3年間行使しないことによって時効により消滅します(「産業災害補償保険法」第112条第1項第1号)。
- 傷病補償年金請求権の消滅時効は、受給権者の傷病補償年金の請求により中断します。この場合、傷病補償年金請求権の消滅時効が傷病補償年金の請求により中断する場合、傷病補償年金の請求が業務上の災害であるかどうかの判断を必要とする最初の請求の場合、その請求による時効中断の効力は、別の保険給付にも及びます(「産業災害補償保険法」第113条)。
傷病補償年金の支給
傷病補償年金の支給
- 傷病補償年金は、以下の傷病補償年金表の重症療養状態等級に基づいて支給します(「産業災害補償保険法」第66条第2項及び別表4)。
· 第1級:平均賃金の329日分
· 第2級:平均賃金の291日分
· 第3級:平均賃金の257日分
- 傷病補償年金は、傷病補償年金の支給決定日より14日以内に支給しなければなりません(「産業災害補償保険法」第82条第1項)。
- 傷病補償年金として支給された金品については、国または地方自治体からの公課金は課せられません(「産業災害補償保険法」第91条)。
重症療養状態等級の変動による傷病補償年金の支給
- 重症療養状態が変動し、重症療養状態等級の変動を
届け出ようとする産業災害労働者は、重症療養状態
変動届に重症療養状態を証明できる医師の診断書を添えて勤労福祉公団に提出しなければなりません(「産業災害補償保険法施行令」第64条第3項、「補償業務処理規定」第40条第7項、別紙第8号書式及び別紙第23号書式)。
- 勤労福祉公団は傷病補償年金を受けている労働者の重症療養状態等級が変動した場合、受給権者の請求または職権により、その変動日より新しい重症療養状態等級による傷病補償年金を支給します(「産業災害補償保険法施行令」第64条第2項)。
未支給傷病補償年金の請求及び支給
- 傷病補償年金の受給権者が死亡した場合、受給権者の遺族が死亡した受給権者の代わりに、未支給傷病補償年金を支給されるためには、未支給保険給付請求書を勤労福祉公団に提出しなければなりません(「産業災害補償保険法」第81条、「補償業務処理規定」第49条及び別紙第29号書式)。
- 未支給傷病補償年金は、未支給傷病補償年金の支給決定日より14日以内に支給しなければなりません(「産業災害補償保険法」第82条第1項)。
傷病補償年金の受給権の譲渡及び差押えの禁止など
- 傷病補償年金を受ける権利は労働者が退職しても消滅しません(「産業災害補償保険法」第88条第1項)。
- 傷病補償年金を受ける権利は譲渡または差押えを受けたり、担保として提供することはできません(「産業災害補償保険法」第88条第2項)。
不当利得の徴収
- 虚偽やその他不正の方法により傷病補償年金を受け取った者からはその金額の2倍に該当する金額を徴収します(「産業災害補償保険法」第84条第1項前段)。
傷病補償年金の支給の効果
休業給付の支給中断
- 傷病補償年金は、休業給付の代わりに支給する保険給付ですので、傷病補償年金を支給される労働者は、休業給付の支給を受けられません(「産業災害補償保険法」第66条第1項)。
補償一時金解雇可能
- 療養給付を受ける労働者が療養を始めて3年が経過した日以降に、傷病補償年金を支給されている場合、その3年が経過した日以降は、使用者が労働者に「勤労基準法」第84条による補償一時金を支給したものとみなし、使用者は療養中の労働者を解雇することができます(「産業災害補償保険法」第80条第4項)。