業務上疾病の種類
業務上疾病の種類(「産業災害補償保険法」第37条第1項第2号)
- 職業性疾病:業務遂行過程にて物理的因子、化学物質、粉塵、病原体、身体に負担を与える業務など、労働者の健康に障害を起こしうる要因を取り扱い、またはそれに曝され発生した疾病
- 災害性疾病:業務上の怪我が原因となり発生した疾病
- 職場いじめ、顧客の暴言などによる業務上の精神的ストレスが原因となって発生した病気
- その他の業務と関連して発生した疾病
職業性疾患と災害性疾病の因果関係
- 業務上の事由により、職業性疾患と災害性疾病が発病した労働者は、医学的・科学的知識の不足により業務と疾病との間の因果関係を立証できない場合が多いことから、「産業災害補償保険法施行令」第34条では業務上疾病の認定基準を設け、「産業災害補償保険法施行令」第34条により定められた要件を満たす場合は因果関係があるとみなし、業務上疾病として認め、労働者が因果関係を立証することの難しさを解決しています。
業務上疾病の認定基準
職業性疾患の認定基準
- 労働者が「勤労基準法施行令」別表5に基づく業務上疾病の範囲に属する疾病にかかった場合(妊娠中の労働者が流産・死産または早産した場合を含む)、以下の要件すべてを満たしているときに業務上疾病(職業性疾患)とみなします(「産業災害補償保険法」第37条第5項及び「産業災害補償保険法施行令」第34条第1項)。
·労働者が業務遂行の過程で、有害・危険要因を取り扱い、または有害・危険要因に曝された経歴があること
·有害・危険要因を取り扱い、または有害・危険要因に曝される業務時間、その業務に従事した期間及び業務、環境などに照らし合わせた時、労働者の疾病を誘発しうると認められること
·労働者が有害・危険要因に曝され、有害・危険要因を取り扱ったことが原因となり、その疾病が発生したと医学的に認められること
災害性疾病の認定基準
- 業務上の怪我を負った労働者に発生した疾病が、以下の要件すべてを満たす場合、業務上疾病(災害性疾病)とみなします(「産業災害補償保険法」第37条第5項及び「産業災害補償保険法施行令」第34条第2項)。
·業務上の怪我と疾病との間に因果関係が医学的に認められること
·基礎疾患または既往症が自然発生的に現れた症状でないこと
※「基礎疾患」とは、現在の疾病に先立ち、継続的に存在し、現在の疾病発症の基礎となる病的状態のことを指します。「既往症」とは、これまでに発症したことのある病気で、現在は治癒しており、または療養を要しないほど回復した状態のことをいいます(『労働特殊理論及び業務上の災害関連訴訟』、司法研修院、189頁)。
業務上疾病の具体的な認定基準
- 業務上疾病に関する具体的な認定基準については、「産業災害補償保険法施行令」別表3において詳細に定めており、具体的な疾病の類型は以下の通りです(「産業災害補償保険法」第37条第5項、「産業災害補償保険法施行令」第34条第3項及び別表3)。
·脳血管疾患または心臓疾患
·筋骨格系疾患
·呼吸器系疾患
·神経精神系疾患
·リンパ・造血器系疾患
·皮膚疾患
·目または耳の疾患
·肝臓疾患
·感染症疾患
·職業性がん
·急性中毒など化学的要因による疾患
·物理的要因による疾患
·その他、労働者の疾病と業務との相当因果関係が認められる疾病
業務上疾病の認定に関する審議
業務上疾病判定委員会による審議
- 勤労福祉公団は業務上疾病の認定について審議するため、勤労福祉公団の分事務所に業務上疾病判定委員会(以下、「判定委員会」という。を設置します(「産業災害補償保険法」第38条第1項)。
- 勤労福祉公団は労働者の業務上疾病または業務上疾病による死亡の認定について判定する際には、その労働者の性別・年齢・健康程度、及び体質などを考慮に入れなければなりません(「産業災害補償保険法」第37条第5項及び「産業災害補償保険法施行令」第34条第4項)。
判定委員会の審議から除外される疾病
- 以下のいずれかに該当する疾病は、判定委員会の審議から除外されます(「産業災害補償保険法」第38条第2項及び「産業災害補償保険法施行規則」第7条)。
·塵肺症
·二硫化炭素中毒症
· 「産業災害補償保険法施行令」第117条第1項第3号による業務上の災害かどうかを判断するために診察を行った結果、業務との関連性が非常に高いという所見がある疾病
· 「産業災害補償保険法施行規則」第22条の各号の韓国産業安全公団、その他業務上疾病かどうかを判断できる機関に諮問した結果、業務との関連性が高いと認められた疾病
·その他、業務とその疾病との間に相当因果関係があるかどうかを明確に知りえる場合で、勤労福祉公団が定めた疾病
判定委員会による審議手続き
- 勤労福祉公団の分事務所の長は、判定委員会の審議が必要な疾病について、保険給付の申請または請求を受けた場合、判定委員会に業務上疾病として認めるかどうかに関する審議を依頼しなければなりません(「産業災害補償保険法」第38条第2項及び「産業災害補償保険法施行規則」第8条第1項)。
- 判定委員会は審議の依頼を受けた日より20日以内に業務上疾病として認められるかどうかを審議し、その結果を、審議を依頼した勤労福祉公団の分事務所の長に知らせなければなりません(「産業災害補償保険法」第38条第2項及び「産業災害補償保険法施行規則」第8条第2項本文)。
※ ただし、やむを得ない事由によりその期間内に審議を終えられない場合、10日を超えない範囲内で1回のみその期間を延ばすことができます(「産業災害補償保険法」第38条第2項及び「産業災害補償保険法施行規則」第8条第2項ただし書き)。